実家帰省で泣かされた

昔から実家が好きじゃなかった。

 

実姉との相性が悪くて、寄れば触れば喧嘩したし、

気難しい姉の機嫌をうかがう日々で、

祖父母との二世帯同居の実家では不満を吐き出すこともままならず

居心地が悪かった。

 

だから社会人になってお金をためて、

3年目で一人暮らしを始めたときは

本当に解放感を感じた。

 

 

 

今年結婚して、初めての盆帰省だった。

 

旦那は優しい人。

私が「実家に帰るの嫌だなー」と言うと

「そんな風に言うなよ、皆会いたがってるよ」

と言うあたたかい人。

家族なら必ず大切に思い合ってると信じてる人。

 

 

私たちが私の実家につくと、祖母が出迎えた。

父が私に「食事の支度を手伝って」と言ったので、

旦那に「ソファに座ってテレビでも見てて」と言うと

旦那は所在無さげに私に一緒にいてほしそうで

「一緒に手伝うよ」とついてきた。

 

確かに、

ズケズケ物を言う祖母と、

耳が遠くて会話が困難な祖父がいる部屋に

一人でいるのも心細いだろうと思ったし

一緒に料理を運んでいるほうが旦那も気が楽そうだったので

手伝ってもらうことにした。

 

旦那がお盆を持って私が配膳していると、

祖母が、私が旦那を働かせていることを咎めてきた。

 

でも旦那に「座ってて」と言うと嫌な顔をするし

私も義実家では一人で放置されるより

旦那と行動したほうが気が楽なのは知っていたので

ここは私が悪者になって「えへへ」と返しておいた。

 

しっかり者で気が利く優しい旦那と

頼りなくて助けられている私。

そういう道化を演じた。

 

でも、旦那が肩身の狭い思いをするうちの実家では、

私がそういう役目になることも必要だと思ったし

別に嫌じゃなかった。

 

料理を運んで席に着くと、

はんぺんの春巻きを食べながら母が

「はんぺんいれたら爆発しちゃった」と笑った。

 

すると旦那が

「はんぺんは結構膨らみますよね」と答えた。

 

旦那はたまに食事も作ってくれる。

旦那が非番で、私が仕事の日の夕食とか。

 

「さすが料理上手、いつもご飯作ってくれるんでしょう?」と

うちの母がほめると、

「いや全然、休みの日だけです、暇なので」と謙遜する旦那

 

「暇だってやらない人はやらないよ」

と愚痴っぽく口をはさむ祖母

 

やらない人とは祖父のことである。

 

「いえいえ…」と言葉に詰まる旦那。

 

固い旦那の様子を見て祖母は、

「ビールは飲まないの?今日車で来たの?」

と飲酒を提案。

「あ、はい、今日は自分の車で来たので」

と断ろうとする旦那。

 

祖母はめげずに、

「え~自分の車で来たのお~!?

なーんで〇子(私)車出してやんないのさあ~!

やだね~気が利かない~!!

酒飲んで緩まないとできない話もあるでしょうに~!」

とわめく。

 

「すいませんね」

と小声でつぶやく私の異変を察知した旦那。

 

「〇子、〇君の車運転できないの~!?

なんで運転させてんのさ~!!運転してやんなよ~!!

できないの~!?」と続ける祖母。

 

私は運転は苦手で結婚を機に練習中。

実家までの運転はできるが、

普段コンパクトカーに乗っている私には

旦那の車は大きくてクセもあるのでこわい。

 

旦那が眠い時や疲れているときは

私が車を出していたが、

この日は旦那が「大丈夫」というので

その言葉に甘えていた。

 

私が「したことないけど、

できるといえばできるけど…」と自信なく言うと

また大声で文句を言い始める祖母。

 

私がイライラしてきて

「昼間から飲むと思わかなったから」と言うと

祖母はまた大声で文句。

 

すると

「いや、でも、今日このあと

自分の実家にも行くかもしれないので」

と嘘をつき私をかばってくれる旦那。

 

「なあに~~それじゃあ仕方ないね」と

やっと祖母は引き下がった。

 

空気が悪くなったが、

「今日はお仕事だったの?」

と母が話を変えて旦那に尋ねると

「はい、今朝仕事明けで帰ってきました」

と旦那が言い、

母が「大変ね~疲れてない?」

という言葉にかぶせて祖母が

 

「なーに仕事明け~!?眠いんじゃない~!?

寝れてないんじゃない~!?ねえ~〇子、

〇君疲れてるだろう~!?眠いんじゃないかい~!?」

 

となぜか私を小突き回して責める。

お盆に旦那が仕事あるとわかってる上で

来いと言ったのはあんただが…

 

「あー、眠いんじゃない?」と私は投げやりに言った。

 

この時点で、

なんか今日の祖母テンション狂ってるな?

と思い始める。

 

普段の祖母はもともと言葉がきつい性格ではあるが、

孫の私には結構愛想を振りまくタイプだ。

なのにこの日はニコリともせず私を責める態度だった。

 

また母が話を変えて、

「わ~〇君いい食べっぷり!

きれいに食べてくれて嬉しいわ~」と言った。

 

旦那は食べるのが早い。

そして、私の実家は小食で食べるのが遅いので、

必然的に旦那が一番早く完食した。

 

「そりゃあそうだよ!

このくらい食べられなきゃ働けないよ!!」

と大声で口をはさむ祖母。

 

いちいち空気を悪くする。

 

そしてめざとく私と父と母のお皿を見て、

「あんたたちはそれっぽっちしか食べないで~!

そんなんじゃまともに働けやしないよ!!」

 

私はまだ副菜と、メインのお弁当の3分の1くらいしか

食べ進めていなかった。

祖母はそれを箸で指しながら、

「見て~!!こんなの!!5歳児じゃない!!

やあ~~ねえ~~!!そんなんじゃダメよ~~!!

これっぽっちしか食べないで~~!!

もったいないね~~!!!

もっと雑に育てたほうがよかったんじゃないかい!!」

と響き渡る声で言った。

 

余談だが祖母も半分くらいしか食べていなかったし、

このお弁当は私の両親が買ってきたものだった。

 

私は涙が出てきた。

なんで育ちまで否定されなきゃいけないのか

わからなかったし、

育ちというならお前も同じ家で暮らしてきたんだから

私を育てたうちの一人だよと思った。

 

「そんなきつく言わなくていいだろ!!」

と父があくまで空気を保とうと笑いながら、

しかしはっきりと言った。

 

でも祖母はまだぐちぐち言っていた。

 

祖父はたぶんあまり聞こえていなくて、

ニコニコしながら食べていた。

 

そわそわと私を気にしていた旦那が私の涙に気づいて、

「あっ」と言った。

涙が止まらなくて、私は席を立って2階に逃げてしまった。

 

 

このあと、

持ってきていたフォトウエディングの写真を両親と見たり、

みんなでデザートを食べたり、実家の猫と遊んだり、

いろいろしようと思ってたことを考えながら、

涙が止まらなかった。

 

 

いつも父至上主義で父にしか甘えない実家の猫が、

私の足元に来て寝転がっていてくれた。

撫でられるのは眠い時以外は嫌がるのに、

撫でても嫌そうにしっぽを振らなかった。

 

まず母が様子見にきてくれて、

そのあと旦那が来てくれた。

ひたすら謝った。

 

旦那は、

「大丈夫大丈夫、きつかったな」と笑ってくれていた。

 

本当にきつかった。

その日はしばらく2階にこもって、

そのまま帰った。

祖母は奥の和室にこもっていて、

私たちが帰る時も出てこなかった。

 

もう実家に行きたくない気持ちでいっぱいだが、

両親と猫には会いたい。

 

祖母は前からきついところはあったが、

あんなに攻撃されたのは初めてだった。

 

母が言うには、あれから祖母がおとなしいらしい。

でも落ち込んでるというより、

バツは悪いけど納得はしていない

という様子らしい。

 

祖母も年老いて前頭葉が衰えてきたんだろうか?

 

それにしても一言謝れって話。